価値ある住まいをデザインする

石川県の建築会社「中部ジェイ・シィ」のブログ

たてもの探訪【犬島精錬所美術館】

ここは岡山県岡山市にある、港から船で10分ほどの場所にある小さな島「犬島」

ここに世界初の建物があると聞きつけ船に揺られてやってきました。

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古代遺跡に来たかのような風景。遠くには小豆島が眺められます。

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犬島は江戸時代には岡山藩花崗岩採石場で、ここで採掘された石は岡山城はもとより江戸城大阪城の石垣で使われているそうです。近代に入ると1909年に銅の精錬所である「犬島精錬所」が造られましたが、10年後に閉鎖した後は廃墟となっていました。壊れた壁に使われているレンガはカラミレンガと言い、銅の精錬の際にできる廃棄物をレンガ状に固めたもので、鉄と銅の含有量の違いによってさまざまな色になっていました。

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廃墟の中を進んでいくとたどり着いたのが【犬島精錬所美術館】。本来、収蔵品の保存のために温度、湿度のコントロールが厳しい美術館ですが、こちらでは人工のエネルギーを利用した冷暖房機器を一切使わずに、自然の力だけで空調を行う世界初の美術館です。使っている材料はカラミレンガや花崗岩などを中心に、外から持ち込むものを最小限にしてあるそうです。訪れた日は外気温5℃でしたが中に入ると、暖かくて汗がでるほどでした。このガラス張りの部屋の床と壁は再利用したカラミレンガを使ってあります。

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部屋を上から見ると天井はガラス張りになっていて採り入れた太陽の光でカラミレンガを蓄熱させ、温まった部屋の空気を内部に送り込む構造になっています。

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建物のほとんどは地中にあるので見えませんが、奥にある直径3メートルの煙突の下にあるガラス張りの部分。ここで温められた空気が上昇気流となって煙突から排出されることで、建物内部の空気を引っ張る役目を果たしています。

そのため建物の中にはゆるやかな風の流れが生み出されます。冬場は暖かい風が流れ、夏場は先ほどのガラス張りの部屋を開放し、空気を建物内部で熱交換させることで涼しい風が美術館の中に流れていきます。

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ここで弊社のなんとか工法はなどと言い始めると、とてもうさんくさくなるので敢えて言いませんが、人工の冷暖房器具に頼りきるのではなく、自然エネルギーを見つめ直すことも大事ではないでしょうか。

美術品の説明をするのを忘れていましたが、ご容赦ください。