価値ある住まいをデザインする

石川県の建築会社「中部ジェイ・シィ」のブログ

たてもの探訪【自由学園明日館】

ここは東京都豊島区。池袋駅のそばにあるモダンな建物「自由学園明日館」(じゆうがくえんみょうにちかん)です。大正10年(1921年)に女学校として創立されたこの建物。設計はアメリカ人建築家、50代半ばのフランク・ロイド・ライト。世界の建築史のレジェンドの一人です。水平ラインを強調し高さを低く抑えたスタイルはライトの初期の建築に見られる「プレーリースタイル」と呼ばれる形式です。

2017031701.jpg

当時、日本の威信をかけた国家プロジェクト「帝国ホテル」の建設が行われており、その設計者として来日していたライトに自由学園創立者の羽仁夫妻が設計を依頼しました。この建物は左右対称になっていますが、この構図は京都の平等院鳳凰堂から着想を得たと言われています。

2017031705.jpg

廊下は天井高が抑えられてかなり低くなっています。廊下と教室の床の段差はなく今でいうバリアフリーですが、当時としては大変珍しかったようです。

2017031703.jpg

廊下から食堂へ出ると、一気に開放感を感じます。この開放感を感じるよう他の部分の天井高を低くしているとのこと。当初、真ん中にある大きな照明はプランに入っていなかったそうですが、子供たちが椅子に座った時に吹き抜け空間が間延びしてしまうと感じたライトが急きょデザインし取り付けたそうです。

2017031704.jpg

ライトが目指したのは「自然と建築の融合」です。「建物のありようはその土地が教えてくれる」と言ったそうですが、周辺環境との調和や土地と建物の一体化。素材に関しても自然のものを多用しています。

この建物と同時期に日本で建設したライトの建物は、古代遺跡のような重厚なものです。あえてこの建物は初期のライト建築に見られるプレーリースタイルにしたのか。それは子供たちに伸び伸びと過ごして欲しいという想いからではないでしょうか。ライトの自然に対する考えはいつの時代にも通じる、受け継いでいくべき思想だと思います。